面接リアル2026-07-08 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

介護施設の面接で聞かれること — 質問の裏にある3つの不安

この記事の要点

「なんで介護なんですか、って聞かれて、うまく答えられなかったんです」

面接から帰ってきた方の第一声は、だいたいこれです。皆さま、この質問、額面通りに受け取っていませんか? 「志望動機を教えてください」も「なぜ介護なんですか」も、言葉としては志望理由を尋ねているだけです。でも、面接官が本当に知りたいのはそこではありません。質問はいつも、その奥にある不安を確かめるための道具です。

とはいえ、質問の裏を読めと言われても、初めての介護転職では何を疑われているのかすら見当がつかないと思います。そこで今回は、僕がこれまでの面談で聞いてきた介護施設の採用の現場感をもとに、面接官の頭の中にある不安を3つに分解します。分解できれば、答え方は自然に決まります。精神論ではなく、構造の話として書きます。

0. 前提 — 面接官は「人柄」ではなく「不安」を見ている

最初に、大きな数字を1つ。介護分野の有効求人倍率は他業種に比べて高い水準が続いており、厚生労働省の職業安定業務統計でも介護関連職種は恒常的な人手不足として扱われています。つまり施設側は本音では猫の手も借りたい状況です。それでも面接で厳しい顔をされるのは、意地悪ではありません。合わない人を採用すると、本人もつらいし、現場も利用者も傷つく——その失敗を繰り返してきた経験則が、面接官の質問の端々に染み出ているだけです。

誤解がないように申し上げると、「人手不足だから誰でも受かる」という話でもありません。人手不足だからこそ、採ってすぐ辞められる人を見抜きたいという圧が、他業種よりむしろ強く働きます。この前提を知っているかどうかで、面接の受け方はまるで変わります。

1. 面接官の頭の中にある「3つのナイ」

僕は社内でこの3つを「3つのナイ」と呼んでいます。介護施設の面接官が、口には出さずに確かめている3つの不安です。

①続かないんじゃないか(定着不安)。介護業界は離職率の高さがずっと課題として語られてきた業界です。厚生労働省の介護労働実態調査でも、離職の理由の上位に「人間関係」「仕事の負担」が繰り返し挙がっています。面接官は、目の前の応募者が半年で辞めた前任者たちと同じ道をたどらないか、まず確かめたいのです。

②もたないんじゃないか(身体不安)。移乗介助、入浴介助、夜勤。介護の現場労働には、腰への負担をはじめとした身体的な負荷が確かにあります。体力に不安のある方が入って、3ヶ月で腰を痛めて離脱する——現場のリーダーは、そういうケースを何度も見てきています。

③合わないんじゃないか(相性不安)。利用者一人ひとりに人柄があり、認知症の進行度も接し方も違います。同僚とのチームワークも欠かせません。技術より先に、「この人はうちの利用者さんと、うちのチームに馴染めるか」を面接官は見ています。

この3つは、面接で聞かれるどの質問の裏にも、必ずどれか(あるいは複数)が隠れています。逆に言えば、質問を3つのナイに変換できれば、答えるべきことが見えてくるということです。

2. 「①続かないんじゃないか」への答え方 — 動機より継続の根拠

「なぜ介護なんですか」「なぜうちの施設なんですか」は、ほぼ確実にこの不安から出ています。ここで多くの未経験者がやってしまう失敗は、動機の美しさで押し切ろうとすることです。「祖母の介護を経験して」「人の役に立ちたくて」——気持ちとしては本物でも、それだけでは面接官の「続くか」は解消されません。

効くのは、動機のあとに続ける根拠を添えることです。「祖母の介護がきっかけですが、それだけで決めたわけではありません。夜勤ありの働き方も含めて、自分の生活リズムで3年は続けられると考えて応募しました」。動機+継続の根拠、この2段構えが「①続かないんじゃないか」を静める最短ルートです。

3. 「②もたないんじゃないか」への答え方 — 正直さが最強の戦略

「体力に自信はありますか」「夜勤は可能ですか」への答え方は、正直さが最強の戦略です。ここで見栄を張って「大丈夫です、何でもできます」と言い切るのは、実は逆効果になりやすいと僕は感じています。面接官は自分の限界を把握していない人を一番怖がります。無理をして半年で壊れるのが、双方にとって最悪の結果だと知っているからです。

だから、できることとできないことを分けて話す。「立ち仕事の経験があり、日中の体力には自信があります。夜勤は未経験なので、最初の数ヶ月は日勤中心でならしてから、慣れ次第シフトに入りたいです」。これは弱みの告白ではなく、自己管理能力の証明として聞こえます。

4. 「③合わないんじゃないか」への答え方 — 具体のエピソードで示す

「これまでどんな仕事をしていましたか」「チームで働いた経験は」は、相性不安から来ています。ここで抽象的な自己PR(「コミュニケーション能力があります」)だけを述べると、面接官の耳には何も残りません。相性不安は、具体のエピソードでしか消えないからです。

4-1. 良い回答/悪い回答の対比

実際にあった面接のやり取りを、少しだけ再構成して紹介します。質問は「これまでの仕事で、人と関わる中で心がけていたことは何ですか」でした。

悪い回答例:「相手の立場に立って、丁寧に対応するよう心がけていました」。間違ってはいませんが、誰にでも言える言葉です。面接官の顔からは、聞き取れたという表情は浮かびません。

良い回答例:「接客業で、クレームの多いお客様を担当することが多かったのですが、まず相手の話を最後まで遮らずに聞くようにしていました。途中で口を挟むと余計に感情的になる方が多かったので。介護の利用者様も、急かさずお話を聞く姿勢は同じだと考えています」。同じ「相手の立場に立つ」でも、具体の場面と行動、そして介護への接続まで語れると、面接官の中で実在する人物として像を結びます。抽象語を言うか、場面を1つ描写するか——この差は面接の合否に直結すると、僕は感じています。

4-2. 未経験でも語れるエピソードは必ずある

「介護経験がないので、語れるエピソードがない」という相談をよく受けます。ですが、相性を語るのに介護経験は要りません。飲食・小売・接客・子育て・PTA活動——人と関わって、相手の状態を見て、対応を変えた経験であれば何でも使えます。子どもの体調や機嫌を見て声かけを変えた経験も、認知症の利用者への対応感覚に地続きです。経験の中身より、「相手を見て動いた」という構造を抜き出せるかどうかが勝負です。

5. 実務パート — 面接前日にできる3行準備

ここからは今日からできる具体の手順です。面接前日、白紙のメモに次の3行を埋めてください。所要時間の目安は15分です。

1行目:続く根拠——「なぜこの仕事を選び、なぜ続けられると思うか」を1文で。2行目:体力の現在地——できること・不安なこと・希望する働き方を正直に1文で。3行目:相性のエピソード——人と関わって対応を変えた経験を、場面・行動・結果の順で3文で。この3行があれば、3つのナイのどの質問が来ても、その場で慌てずに引き出せます。

逆質問も準備しておくと印象が変わります。おすすめは次の2つです。「入職後の研修期間は、どのくらいの期間で、どんな内容ですか」——これは意欲と計画性の両方を示せます。「夜勤に入るまでの流れを教えてください」——これは③の身体不安に自分から向き合う姿勢として伝わります。逆に、給与や休日の質問は必要な情報ですが、聞くタイミングは面接の終盤、面接官から「何か質問はありますか」と振られたあとに置くのが無難です。

6. よくある質問 — 面接前夜の3大不安に答える

Q1「資格がありません。それでも面接に呼ばれますか」——呼ばれます。介護職員初任者研修は入職後に取得できる施設が多く、無資格・未経験者向けの求人枠が北関東の施設でも一定数あります。ただし面接では「入職後、いつまでに初任者研修を取るつもりか」を自分から示すと、③の相性不安の解消にもつながります。「無資格ですが、内定をいただけたら3ヶ月以内に初任者研修を受講したいです」の一言があるかないかで、面接官の印象は変わります。

Q2「面接で沈黙してしまったら、それだけで落ちますか」——落ちません。むしろ、その場で取り繕った言葉より、少し考えてから出てきた一言のほうが信頼されることもあります。僕がこれまで聞いてきた採用側の本音でも、即答の流暢さより「この人は誠実に考えて答えているか」を見ているという声のほうが多い印象です。沈黙を怖がって早口の作り話をするより、「少し考えさせてください」と言って間を取るほうが、①の定着不安にはむしろプラスに働きます。

Q3「前職を辞めた理由を、正直に話していいですか」——正直に、ただし言葉の順番には気を配ってください。「人間関係が嫌で辞めました」で終わると、面接官は「うちでも同じことが起きるのでは」と①の不安を強めます。「人間関係の負担が大きく、チームで支え合う働き方を求めて転職を考えました」のように、辞めた理由の先に次に求める条件を添えると、同じ事実でも前向きな根拠に変わります。ネガティブな事実を隠す必要はなく、着地の一文を用意しておくことが大切です。

Q4「面接官が高圧的でした。それでも受けるべきですか」——1回の面接の空気だけで施設全体を判断するのは早計ですが、繰り返し違和感を覚えるなら、それも大事な情報です。介護は長く働く前提の仕事なので、面接は施設があなたを選ぶ場であると同時に、あなたが施設を選ぶ場でもあります。見学や職場体験の機会があれば、遠慮なく申し出てください。実際の現場の空気は、面接官1人との30分よりずっと雄弁に語ってくれます。

(結論)質問の裏を読めば、答え方は自然に決まる

まとめます。①介護施設の面接官の頭の中には「続かないんじゃないか」「もたないんじゃないか」「合わないんじゃないか」という3つのナイがある。②それぞれに、動機+継続の根拠、正直さ、具体のエピソードという答え方がある。③準備は前日の3行メモで十分間に合う。

最後に1つだけ、言い切っておきます。面接官は、あなたを落とすために質問しているのではありません。一緒に働ける根拠を、あなたの言葉から探しています。その根拠さえ渡せれば、経験のあるなしは、思っているほど大きな壁ではありません。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問の診断で、自分の経験のどこが介護の現場に接続するかを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 介護の面接で「なぜ介護なんですか」と聞かれたらどう答える?

この質問は「続かないんじゃないか」という定着不安から出ています。動機の美しさだけで押し切るのは失敗しやすく、動機のあとに続ける根拠を添える2段構えが効きます。たとえば「祖母の介護がきっかけですが、夜勤ありの働き方も含めて自分の生活リズムで3年は続けられると考えて応募しました」のように、動機+継続の根拠を語ると、面接官の不安が静まります。

Q. 介護の面接で体力や夜勤について聞かれたら?

「体力に自信はありますか」「夜勤は可能ですか」は身体不安から来ています。見栄を張って何でもできると言い切るのは逆効果で、面接官は自分の限界を把握していない人を最も怖がります。できることとできないことを分け、「日中の体力には自信があり、夜勤は未経験なので数ヶ月は日勤中心でならしてから入りたい」と話すと、自己管理能力の証明として伝わります。

Q. 介護未経験でも面接で語れるエピソードはありますか?

あります。相性を語るのに介護経験は不要です。飲食・小売・接客・子育て・PTA活動など、人と関わり相手の状態を見て対応を変えた経験なら何でも使えます。子どもの体調や機嫌を見て声かけを変えた経験も、認知症の利用者への対応感覚に地続きです。経験の中身より「相手を見て動いた」という構造を、場面・行動・結果の順で抜き出せるかが勝負です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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