職域マップ2026-07-08 公開監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

茨城・栃木・群馬、施設の採用事情は3県で違う

この記事の要点

「茨城も栃木も群馬も、結局は同じ北関東ですよね」

面談でこう言われるたびに、僕は少し止まります。皆さま、この3県、地図の上では隣り合っていますが、施設の採用事情という切り口で見ると、実はかなり顔つきが違います。同じ「北関東」というくくりで求人を眺めていると、見えるはずのものが見えなくなる——今回はそういう話です。

結論を先に言うと、3県それぞれに事情があり、その事情を知っているかどうかで、求人票の読み方が変わります。精神論ではなく、構造の話として整理していきます。

0. 前提 — 「北関東」でひとくくりにできない理由

まず大きな前提から。日本全体の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は、総務省の人口推計によれば全国平均でおおむね3割に迫る水準まで上がってきているとされています。北関東3県も、この全国的な流れの外側にはいません。ただし「高齢化がどこも一律に進んでいる」わけではなく、県内でも都市部と郡部で差が大きいというのが、この地域の実感です。

率直に言うと、「◯県は高齢化率◯%」という一言で片付けられるほど、この話は単純ではありません。県単位の平均値の裏に、市町村単位の大きなばらつきが隠れている——これがまず押さえておくべき前提です。

1. 3県の傾向差 — 高齢化率・施設密度の見え方

その上で、あえて3県のニュアンスの違いに触れます。茨城県は県北の山間部・沿岸部で高齢化が進んでいる一方、つくば・土浦周辺は研究学園都市としての人口流入があり、県内で高齢化の進み方に差が出やすい傾向があります。茨城県は面積も広く、県北と県南で気候も産業も別の県のように違う、というのが率直な印象です。栃木県は宇都宮を中心とした都市圏と、県北・県西の中山間地域とで施設の密度が異なり、郡部ほど「近隣に選べる施設が少ない」という声を聞くことが多い地域です。群馬県は前橋・高崎という2つの中核都市に施設が集まりやすく、周辺の町村部との差が比較的はっきりしている、というのが僕の体感値です。

いずれも「傾向」であって断定ではありません。ただ共通して言えるのは、県単位ではなく、通える範囲の市町村単位で見たほうが実態に近づくということです。厚生労働省の介護保険事業状況報告等を見ても、施設・事業所の分布は市町村ごとの高齢者人口と密接に連動しており、「県のイメージ」だけで判断すると、実際に通える施設の選択肢を見誤ります。

1-1. たとえば、同じ茨城県内でも、つくば市周辺は比較的若い世代の人口流入があるため、施設の求人でも「新規開設で人員を大きく増やしている」ケースが目立ちます。一方で県北の中山間地域では、既存施設の欠員補充が中心で、募集人数自体は少なくても、1人あたりの採用の切実さは強い、という違いがあります。求人票の「募集人数」の多寡だけで施設の勢いを判断すると、この裏側の事情を見落とします。

1-2. もう一つ触れておきたいのは、施設の新規開設のペースです。人口動態を踏まえて有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の新規開設が続いているエリアでは、開設時期に合わせて未経験者を含む大量採用が動くタイミングがあります。逆に既に施設が飽和しているエリアでは、新規求人は欠員補充が中心になりやすく、求人の出方そのものがエリアによって波打っている、と捉えておくと求人票の見え方が変わってきます。

2. 労働市場の特徴 — 工業地帯との人材競合、通勤圏の違い

北関東を語る上で外せないのが、製造業の存在です。茨城県北の日立、栃木県南の自動車関連工場群、群馬県の太田・大泉周辺——いずれも大手・中堅の製造拠点が集積しています。これが介護施設の採用に何をもたらすか。介護職と製造業が、同じ地域の同じ労働人口を奪い合うという構図です。

工業地帯の求人は、未経験からでも比較的高い時給・月給が提示されやすく、介護の初任給水準と競合します。僕の周囲の採用担当者の実感で言うと、「工場の求人が活発な時期は、介護の応募が減る」という声は北関東の複数の施設から聞こえてきます。これは3県共通の構造で、他の地方には無い北関東特有の採用の難しさだと感じています。

2-1. 一方で、通勤圏という切り口で見ると、3県の性格はさらに分かれます。栃木県南部・群馬県東毛地域は東京への通勤圏に近く、若年層の県外流出圧力がある一方で、Uターン・Iターンでの就職相談も一定数あります。茨城県は常磐線・つくばエクスプレス沿線とそれ以外とで、通勤・転職の選択肢の幅が大きく変わる県です。

2-2. もう一つの実感として、「地方だから車社会」という前提は、施設選びにも直結します。都市部のように「駅から徒歩」で通える施設は少数派で、多くの求職者が自家用車での通勤を前提に、片道30分圏・1時間圏という距離感で職場を探しています。この通勤の許容範囲の広さこそ、北関東で仕事を探すときの一つの武器になります。

2-3. 家族構成が採用競争に与える影響も、北関東ならではの実感として付け加えておきます。持ち家率が高く、三世代同居や近居も都市部より多い地域のため、「実家の親の介護を経験したことが、介護職への転職のきっかけになった」という声を、僕はこの地域で何度も聞いてきました。これは施設側にとっても、動機の確かな未経験者を採用しやすい土壌になっています。工業地帯との人材競合がある一方で、こうした動機の強さが介護職側の追い風になっている、という両面を押さえておくとバランスの良い見方ができます。

3. 「地方だから求人が少ない」への反論

ここが、この記事で一番伝えたいことです。「地方だから介護の求人が少ないのでは」という思い込みを、僕は何度も聞いてきました。率直に言うと、これは事実誤認です

むしろ構造は逆で、地方ほど介護人材の不足感が強く、未経験者の採用に積極的な施設が多いというのが実態です。理由は単純で、生産年齢人口の減少が都市部より先に地方で進んでいるからです。厚生労働省の職業安定業務統計をもとにした報道等では、介護関連職種の有効求人倍率は全国平均でも高水準(体感値としては3倍前後)とされることが多く、都市部に限らず地方部でもこの傾向は強いとされています。都市部のように「人が来るのを待てば埋まる」施設は少なく、地方の施設ほど、育成前提で未経験者を採る動機が強いのです。

誤解がないように申し上げると、「だからどこでも採用される」という話ではありません。施設ごとに育成体制やシフトの組み方は大きく違います。ただ、「地方=求人が少ない=選べない」という思い込みは、この地域では当てはまらない、ということは言い切っておきます。

この思い込みが生まれる背景も、少し補足しておきます。求人検索サイトで「介護 求人 ◯◯市」と検索したとき、都市部に比べてヒット件数の絶対数が少なく見えるのは事実です。ただしこれは掲載媒体の偏りによるところが大きく、地方の施設ほどハローワークや地元の求人紙、施設の直接募集を使う比率が高い傾向があります。検索結果の件数の少なさは、求人そのものの少なさとイコールではない、という点は覚えておいて損はありません。

4. 実務パート — エリアで求人を比較検討するときに見る指標

ここからは、実際に求人票を比較するときの手順です。以下の4つを、応募前に15分ほどで確認してください。

4-1. 通勤圏の実距離。地図上の直線距離ではなく、実際の道路での所要時間を確認します。北関東は幹線道路沿いでも信号待ちで想像以上に時間がかかる区間があり、「地図では近いのに車で40分」というケースが珍しくありません。冬場の路面状況(特に県北・山間部)も、通年で働く前提なら確認しておく価値があります。

4-2. 施設種別の分布。同じ「介護施設」でも、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・デイサービス・訪問介護では、働き方も未経験者への求め方もまるで違います。エリアによって施設種別の構成比が違うため、「このエリアはデイサービスが多い」「このエリアは入所施設が中心」という土地勘を、求人票を並べて確認する段階で持っておくと、面接での質問の的が絞れます。

4-3. 処遇改善加算の取得状況。介護職員処遇改善加算は、施設が加算を取得しているかどうかで、実際の給与水準に差が出る制度です。業界団体の調査等では、加算の取得率は全国的に高水準(目安として9割前後)とされることが多いものの、加算区分(取得している加算の種類)までは施設によって差があります。求人票や説明会で「どの区分の加算を取得しているか」まで確認できると、給与の内訳への理解が深まります。

4-4. 夜勤・シフトの体制。工業地帯の求人と競合する地域だからこそ、施設側も夜勤専従者の確保に苦労しているケースが多く見られます。夜勤の回数や、日勤中心の配属が可能かどうかは、体力面での長期的な働き方に直結する指標です。

4-5. 送迎バス・車通勤補助の有無も、北関東特有の確認項目です。公共交通の便が限られる地域では、施設が最寄り駅からの送迎バスを出しているか、マイカー通勤の駐車場代を補助しているかで、実質的な手取りや通勤の負担感が変わります。求人票の給与欄だけを見て比較すると、この差を見落としがちです。面接や見学の際に一言確認するだけで、実際の働きやすさの解像度がぐっと上がります。

(結論)3県の違いを知ることは、求人の解像度を上げること

まとめます。①茨城・栃木・群馬は、高齢化の進み方も施設の密度も県内で差があり、県単位でなく市町村単位で見るのが実態に近い。②3県共通で、製造業と介護職が同じ労働人口を奪い合う構造があり、これが北関東特有の採用の難しさになっている。③「地方だから求人が少ない」は誤解で、むしろ未経験者採用に積極的な施設が多い。④求人比較では通勤圏・施設種別・処遇改善加算・シフト体制の4点を見る。

「北関東」という一つの括りの中に、実は3つの違う市場があります。この違いを知っているだけで、同じ求人票の読み方が変わってくる——それが、この記事で一番伝えたかったことです。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問の診断で、自分の経験や希望がどのエリア・どの施設種別に合いやすいかを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 北関東3県で施設の採用事情はどう違う?

3県とも県内で高齢化の進み方や施設密度に差があります。茨城はつくば・土浦周辺で人口流入があり県北山間部で高齢化が進行、栃木は宇都宮都市圏と中山間地で施設密度が異なり、群馬は前橋・高崎に施設が集まりやすいのが記事の体感値です。県単位でなく通える範囲の市町村単位で見るほうが実態に近づきます。

Q. 地方は介護の求人が少ない?

記事では事実誤認だとしています。生産年齢人口の減少が都市部より先に地方で進むため、地方ほど介護人材の不足感が強く、育成前提で未経験者を採る動機が強いのが実態です。検索サイトのヒット件数が少なく見えるのは掲載媒体の偏りで、地方はハローワークや地元求人紙、直接募集の比率が高いため、件数の少なさは求人の少なさとイコールではありません。

Q. エリアで求人を比較するとき何を見ればいい?

応募前に15分ほどで4点を確認するとよいとしています。①地図でなく道路での実所要時間や冬場の路面状況を含む通勤圏の実距離、②特養・有料・デイなど施設種別の分布、③処遇改善加算の取得状況と加算区分、④夜勤・シフトの体制です。加えて送迎バスやマイカー通勤補助の有無も北関東特有の確認項目として挙げられています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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