働き方の違い2026-07-31監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

訪問介護と施設介護は何が違う?向き不向きと選び方【北関東版】

この記事の要点

「施設だと夜勤があるから訪問に変えたいんですが、給料は下がりますよね?」

先日、宇都宮市内の特別養護老人ホームで働く30代の女性から、面談でこう聞かれました。夜勤明けの疲労と、子どもの送り迎えとの両立に悩んでの相談でした。結論から言うと、訪問介護に変えたからといって給料が一律に下がるわけではありません。ただし「夜勤がないから楽になる」という単純な話でもない、というのが実務者としての僕の実感です。この記事では、数字・1日の流れ・向き不向き・失敗事例という順で、判断材料を整理していきます。

0. 結論 — 訪問と施設は優劣ではなく「働き方の設計思想」の違い

僕が北関東の転職相談で最も聞かれる質問の一つが、この「訪問と施設、どっちがいいですか」という問いです。結論から言うと、優劣の話ではなく、働き方の設計思想がまったく違う、というのが実務者としての僕の実感です。訪問介護は利用者宅を一人で回る一人称型の裁量労働に近く、施設介護は複数人で役割分担するチーム型の労働に近い。料理でたとえるなら、訪問は一人で店を切り盛りする定食屋、施設は厨房を役割分担で回すレストランのようなものです。この違いを理解しないまま「夜勤がないから」という理由だけで訪問に飛び込むと、こちらはこちらで別のしんどさにぶつかることになります。逆に「人間関係が苦手だから訪問へ」という動機だけで移った方が、孤独な判断の重さに耐えられず数か月で施設に戻ってきた、というケースも僕は何度か見てきました。動機の中身までいったん整理してから決めることを、僕はおすすめしています。

1. 数字で見る訪問介護と施設介護の求人事情

まず客観的な数字から見ていきます。訪問介護の有効求人倍率は、他の介護職種と比べても際立って高い水準にあります。有効求人倍率とは、ハローワークに出ている求人数を求職者数で割った数字で、1を超えるほど「働き手を探している事業所の方が多い」状態を示します。

区分有効求人倍率の目安比較の考え方
訪問介護員15倍前後ハローワーク求人数÷求職者数(令和4年度)
施設等の介護職全体4倍前後同上の算出方法
全産業平均1倍台前半同上の算出方法

出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度 介護労働実態調査」等で示された数字をもとにした目安値です。年度や地域によって変動するため、あくまで傾向としてご覧ください。ここで注意したいのは、この15倍という数字は「訪問介護が施設より条件がいい」ことを意味しないという点です。むしろ移動が前提の仕事であるために採用の間口が狭くなりやすいこと、そして長年現場を支えてきたベテランヘルパーの引退が続いていることが、倍率を押し上げていると僕は見ています。北関東エリアで言えば、群馬県内の中山間部の事業所ほどこの倍率の高さを肌で感じているという声を、僕はよく耳にします。担当エリアが広く、1人のヘルパーが1日にこなせる件数にも移動時間の分だけ限界が出てくるからです。数字の大きさだけを見て「引く手あまた=好条件」と早合点しないことが、この項目でお伝えしたい一番のポイントです。

2. 訪問介護の1日 — 移動、直行直帰、ひとりで判断する現場

訪問介護の1日は、朝の申し送りがない事業所も多く、利用者宅を1件30分から90分ほどかけて1日5〜7件ほど回るスタイルが基本です。北関東は特に、宇都宮や高崎のような市街地を離れると利用者宅同士の距離が離れており、車移動が前提になります。冬場の積雪や凍結による移動の遅れも、都市部の訪問介護とは違う北関東ならではの悩みだと僕は感じています。件数と件数の間に移動時間が挟まるため、賃金の設計が施設とは根本的に違うことも押さえておきたいところです。

高崎市内で施設介護から訪問介護に移ったある候補者は、僕にこう話してくれました。「施設だと誰かに相談できたけど、訪問だと利用者さんの前で判断するのは自分ひとり。最初の3か月は怖かった」。一方で、利用者と1対1でじっくり関われることや、人間関係のストレスが施設より少ないことを、この方は転職後の一番のメリットとして挙げていました。移動の負担と引き換えに得られるものがある、という点は覚えておいてよいと思います。茨城県内で訪問介護に転職した別の候補者からは「利用者さんの生活のペースに合わせて動けるのが、施設より性に合っていた」という声も聞きました。同じ訪問介護でも、移動の孤独をしんどいと感じる人と、自分のペースで動ける自由と感じる人に分かれます。向き不向きは人によって本当に分かれる部分だと感じます。

3. 施設介護の1日 — チームで支える安心感とシフトの縛り

施設介護は、複数の職員でシフトを組み、申し送りと記録を通じて情報を共有しながらチームでケアを組み立てていきます。判断に迷ったときにその場で相談できる相手がいることは、訪問介護にはない大きな安心材料です。特に未経験からのスタートでは、先輩の介助を横で見て学べる環境があるかないかで、最初の半年の成長速度がまるで違ってくると僕は感じています。一方で、夜勤を含むシフトに拘束される働き方になりやすく、人間関係が合わない同僚とも毎日顔を合わせる必要がある点は、訪問介護にはない負担だと僕は考えています。茨城県内のある特養で夜勤専従として働く男性からは「夜勤は大変だけど、深夜帯は静かで自分のペースで記録が書ける時間でもある」という声も聞きました。負担の中身をどう受け止めるかは、立場や性格によって変わるのだと思います。夜勤の実態については別記事でも詳しく触れていますので、あわせてご覧いただくと立体的に掴めるはずです。

4. 「向いている人」を3つの軸で見極める

向き不向きを語るとき、僕は人間力・職種経験・技術スキルという3つの軸を分けて考えるようにしています。この3つを混ぜて「明るい人が向いている」のようにひとくくりにすると、実際の判断を誤りやすいからです。

訪問介護に向く傾向施設介護に向く傾向
人間力(対人距離感)1対1でじっくり関わりたい人大勢の中で役割分担したい人
職種経験施設経験があり利用者理解に自信がある人未経験からでも先輩の動きを見て学びたい人
技術スキルその場で判断し記録に残す力チームで情報共有し引き継ぐ力

人間力の軸で言えば、1対1でじっくり関わりたい人は訪問向き、大勢の中で役割分担したい人は施設向きという傾向があります。職種経験の軸で言えば、施設での経験があり利用者理解にある程度自信がある人は訪問に移りやすい一方、未経験からのスタートは施設で先輩の動きを見ながら学ぶ方が安全だと僕は考えています。技術スキルの軸では、その場で判断して記録に残す力が訪問介護では特に問われます。誰かに確認できない環境で、利用者の体調変化に気づき、必要なら事業所やケアマネに連絡する判断を一人で下すからです。ここで大事なのは、3つの軸のうちどれか一つだけで「自分は訪問向きだ」と決めつけないことです。たとえば「人間関係が苦手(人間力の軸)だから訪問へ」と考えても、技術スキルの軸で一人判断への自信がなければ、訪問はかえってつらくなります。3つとも一度紙に書き出して、自分がどの軸で訪問寄り・施設寄りなのかを見える化してみることを、僕はおすすめしています。

5. よくある失敗と対処、そして実務チェック手順

実際の相談現場で見てきた失敗のパターンを、対処法とあわせて整理します。ひとつめは、時給の額面だけを見て訪問介護に転職し、移動時間が賃金に含まれない契約だったために手取りが下がったケースです。対処法としては、求人票の時給欄だけでなく「移動時間の扱い」を面接で必ず質問し、口頭ではなく雇用契約書に明記してもらうことです。ふたつめは、利用者都合のキャンセルが続いた月に、想定より稼働件数が減り収入が不安定になったケースです。多くの事業所ではキャンセル時の賃金保障の仕組みがありますが、保障率や上限件数は事業所によって差があります。入職前に「キャンセルが多い月でも最低いくら保障されるか」を確認しておくと、この失敗は避けやすくなります。みっつめは、施設でのチーム作業に慣れた人が訪問に移り、ひとりで判断する重さに耐えられず短期離職につながったケースです。これは向き不向きの見極め不足が原因であることが多く、僕は初めて訪問に挑戦する方には、まず登録ヘルパーとして週数回から試してみることを勧めています。

移り方そのものにも、相談を受けていて多い3パターンがあります。ひとつは、夜勤の負担を減らしたくて施設から訪問に移るパターン。もうひとつは、訪問の孤独感や移動の負担に疲れて、施設のチーム体制に戻るパターン。そしてもうひとつが、登録ヘルパーとして訪問と施設のパートを掛け持ちし、様子を見ながら本業を決めていくパターンです。それぞれ得られるものと失うものが違います。

移り方のパターン得られやすいもの失いやすいもの
施設→訪問1対1の関わり、夜勤からの解放相談相手、収入の安定感
訪問→施設チームの安心感、シフトの見通し裁量の大きさ、時間の自由度
掛け持ち両方の適性の見極め体力的な余裕、まとまった休み

どのパターンを選ぶにしても、僕は次の3段階の手順で確認することをおすすめしています。所要時間の目安もあわせて書いておきます。まず求人票を読む段階で15分ほどかけて、移動時間が労働時間として賃金に含まれるか、利用者都合のキャンセル時に賃金保障があるか、直行直帰にかかる交通費が実費で支給されるかの3点をチェックします。次に面接の場で、この3点を担当者に直接確認し、口頭での回答内容を必ずメモに残します。所要時間は面接時間内の5分程度で十分です。最後に、内定後の雇用契約書にこの3点が明記されているかを、契約締結前の10分程度で読み合わせます。合計しても30分ほどの手間です。この3段階の確認を怠ると、訪問介護に移ったあとで「思っていた時給と違う」というミスマッチにつながりやすいと僕は感じています。逆に言えば、この30分を惜しまなければ、失敗の大半は入職前に防げるということでもあります。

(結論)

訪問介護と施設介護は、どちらが優れているという話ではなく、一人称型かチーム型かという設計思想の違いです。求人倍率という数字の裏には、それぞれの働き方に合う人と合わない人がいるという現実があります。皆さんいかがでしたでしょうか。ご自身の対人距離感や、判断をひとりで背負うことへの向き不向きを、人間力・職種経験・技術スキルの3軸で一度整理してみると、訪問と施設どちらを選ぶべきかが見えてくるはずです。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 訪問介護と施設介護、どちらが給料は高いですか?

一律にどちらが高いとは言えず、施設は夜勤手当込みで総支給額が上がりやすい一方、訪問は移動時間込みの時給設計や資格手当で単価が上がるケースがあります。求人票では基本給だけでなく手当の内訳まで確認することが大切だと僕は考えています。

Q. 未経験でも訪問介護から始められますか?

未経験からでも訪問介護に入ることは可能ですが、多くの事業所で介護職員初任者研修修了が応募条件になっており、施設介護以上に資格のハードルが先に来る傾向があります。まず初任者研修を取得してから訪問介護に挑戦する順番が現実的だと僕は考えています。

Q. 施設介護から訪問介護に転職する際に気をつけることは?

移動時間が労働時間として賃金に含まれるか、利用者都合のキャンセル時に賃金保障があるか、直行直帰の交通費が実費支給かを求人票と面接で必ず確認してください。この3点の確認漏れが訪問介護転職後のミスマッチにつながりやすいと僕は感じています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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